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日常のあれこれ

備忘録

13〜16日に母とふたりで祖父母の家に行った。1年半ぶり。

玄関のドアを開けたら祖母が奥からぱたぱたとやってきて、開口一番「あらあらいらっしゃい、ボーイフレンドはできた?」と聞かれた。相当心配されているのかもしれない。

一方祖父のアルコール中毒は想像以上に進行していて、台所を開けたら酒便を開けた時と同じような匂いがしてびっくりした。

 

印象に残ったのは滞在中何度も何度も祖母と同じ会話を繰り替えししたことだった。

2年ほど前の事故以来本当に少しずつではあるが確実に認知症が進行しており、直近の出来事は覚えていられないようになっているらしい。最初はそれを知らなかったため、ただ認知症が進んでいるだけだと思っていた。

祖母は色についてたくさん言及してきた。髪の内側部分を赤く染めたことにも気付いたし、爪をグレーに塗っていたことにも注目してきた。何度も何度も同じことを聞いた。その髪は染めたの、その爪の色なかなかないわねえ、黒じゃないね、やっぱりセンスが違うのねえ、なかなかないわよねその色、ところでその髪は染めたの?ちまたでよく聞く「おじいちゃんご飯はさっき食べたでしょ」と同じようなかんじ。聞かれるたびに染めたのよ、グレーだよ、自分で塗ったの、なかなかないかもね、とこちらも同じような返答をした。

母から聞くところによると、直近のことは覚えていられないかわりに昔の話をよくするようになったらしい。おかげで母も知らなかった祖母の生い立ちや母の小さい頃の話など帰省するたび新しい情報を知ったという。だから料理もまだまだ全然でき、出汁をとらせれば美味しいし煮物の味付けなんて最高だった。でもやっぱり鍋を火にかけたりしていることは忘れがちだし、ご飯は炊かなくて良いよと言っても気付いたら炊いてしまったりしていて、昔からの習慣になっていることは忘れることなくやってしまうものなんだなと思ったりした。

最終日の朝に家を出て、母と途中コンビニに寄って朝ご飯を食べながら空港まで車を走らせた。その時に母から祖母が直近のことを忘れてしまうことを聞いた。まあ歳をとっていろんなことぽろぽろ忘れてっちゃうのもそれはそれで幸せかもね、と母は言っていて、おそらく祖母はもう既にわたしたちが家に来たことも覚えてはいないだろうという話だった。それを聞いて愕然とした。ついさっきまで普通に話をしていた人の記憶がぱっとなくなってしまうことを実感した。

その前の晩に祖母とこたつでコーヒーを飲んでいたら、客間に飾ってある絵をさして「あれもなんともつまらないから何か捨てちゃうような絵とか作品とかあったらおばあ ちゃんにちょうだい、なかなか見ないようなおもしろいやつ、お話のネタにもなるでしょ」と言ってきて、わたしは写真をやっていたから何か見繕って額に入れ て送るよ、と言ったら「楽しみにしてるわ」と言ってくれた。そういうことに慣れていないのでなんだか荷が重いなとは思いつつ、何が良いだろうと考えをめぐらせた。でもきっとそれも覚えてはいない。わたしの赤い髪に気付いたことも、爪のグレーが素敵と言ったことも、ご飯を食べたことも、わたしたちが家に来たことも。

中学の時に小川洋子の「博士の愛した数式」を読んで、博士の"記憶が80分しかもたない"という設定がフィクションだと思っていてそれゆえにおもしろい話だと思いながら読んだのだけど、それが自分の見にふりかかったことに気付いた。こういうことが現実に起こりうるんだなと感じた。

 

祖母は前述の通りだけど祖父もアル中になっても「早く良い人を見つけておじいちゃんちに連れてきなさい」と言ってきて、はいはいと受け流しつつそういう状況を考えると別に結婚とか考えてない相手でももし彼氏ができたら祖父母が生きているうちにお付き合いしている姿を見せてあげたいなと思ったりした。

一度兄が彼女を連れて祖父母の家に遊びに行ったことあって、その時は信じられないと思ったけれど、もしかして兄もこういう気持ちだったのかなと考えたらやっぱりあいつはできた人間だなと思った。

 

山口での3日間は、錦帯橋を見たり、母とカフェでだらだらコーヒー飲んだり、隣町まで海沿いの国道を走ドライブして山のてっぺんの展望台から周辺を一望し たり、山口に行くたび覗いているセレクトショップに行ったり、オリンピックの男子フィギュアを明け方まで見たりしていた。ただひらすらだらだらとしていた ように思う。最高だった。

わたしが彼氏を連れてくるのが先か、祖父母がこの世からいなくなるのが先かと冗談とばせるうちは良いけれど、老いることって、と考えずにはいられなかった。

次に会いに行けるのはいつになるのだろう。そういえば写真を1枚も撮らなかったことに気付いて、ちゃんと正面向いてる写真撮らせてもらえば良かったと後悔している。

今度はちゃんとお願いして写真撮らせてもらおう。